大学・大学院留学や海外移住、就職や転職などのために英語の資格を取ろうと思った時、最初に出てくる試験がTOEFLとIELTSでしょう。
筆者はアメリカの大学にMBA留学のためにTOEFLの受験をしましたが、スコアが伸び悩んだ時にIELTSの存在を知りました。IELTSとはTOEFLと同様に海外の大学を受験する際に必要で英語力を判定するテストです。
「IELTSの方が簡単らしい」「IELTSの方がスコアが伸びやすい」ともよく言われていますが、どちらを受けるべきか悩んでいる方も多いと思います。今回はこちらの記事でそもそもIELTSとは何か?どちらを受けるべきか?を徹底的に解説したいと思います。
<この記事の対象者>
・IELTSの試験形式(試験時間、受験費用など)や問題等、TOEFLとの違いを知りたい
・IELTSの難易度を知りたい
・TOEFLとIELTSどっちがいいか迷っている、どっちが簡単か知りたい
TOEFLとの違いを知る前にIELTSについて確認しよう
IELTS(読み方:アイエルツ)は正式名称がInternational English Language Testing Systemであり、海外留学をするために英語力を証明できるテストであり、英検が運営している試験です。現在はイギリス、アメリカ、オーストラリアなど世界120カ国で受験できます。
公式サイトでは以下のように紹介されています。
International English Language Testing System(IELTS:アイエルツ)は、海外留学や研修のために英語力を証明する必要のある方、およびイギリス、オーストラリア、カナダなどへの海外移住申請に最適なテストです。
イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドのほぼ全ての高等教育機関で認められており、アメリカでも TOEFLに代わる試験として入学審査の際に採用する教育機関が3,000を超え、英語力証明のグローバルスタンダードテストとして世界中で受験者が増え続けています。引用元:IELTS Official Test Center
URL:https://www.eiken.or.jp/ielts/merit/
IELTSは2つのテスト(モジュール)タイプがあります。
アカデミック・モジュール | 海外留学をする際に授業についていける英語力かどうかを判定するテスト |
ジェネラル・トレーニング・モジュール | 英語圏での学業以外の研修、またはオーストラリア、カナダ、ニュージーランドへの移住申請をする場合に必要とされるテスト |
こちらのサイトでは海外留学をする際に必要なアカデミック・モジュールタイプの試験について記述させていただきます。
IELTSはTOEFLと同様に海外の大学に留学するための審査基準として用いられています。IELTSはイギリスを中心としたヨーロッパ諸国やオーストラリアの大学受験をする際に一般的ですが、アメリカの大学含め受験先の大学が指定していればIELTSのスコアでも受験することはできます。(現在多くのアメリカの大学でもIELTSのスコアを受け入れています。)
一部の大学ではTOEFLのスコアを重要視しているところもあるので、ご自身が受験する大学がどのスコアを受け入れているのか確認しておくのが重要ですね。
TOEFLとIELTSの違い: 試験時間・問題・費用など
ではIELTSの気になる内容についてご紹介していきます。
IELTSの試験時間や受験費用などTOEFLと比較!
まずはIELTSの試験形式をTOEFLと比較してみましょう。
<比較表>
TOEFL iBT | IELTS | |
試験科目 | 4科目(Reading, Listening, Speaking, Writing) | 4科目(Reading, Listening, Speaking, Writing) |
試験時間 | 約3時間 | 約2時間45分 |
点数 | 各30点満点、合計120点満点 | 各1.0〜9.0のバンドスコア |
試験日 | ETSが公式発表している日程で開催 | ETSが公式発表している日程で開催 |
受験費用 | US$235 | 25,380円(税込) |
会場 | 全国各地(会場に設置されるパソコンで受験、受験開始は各自) | 全国各地(筆記試験。スピーキングテストは筆記テストの前後6日以内の日程で別日に受験する) |
結果通知方法 | オンライン、郵送 | オンライン、郵送 |
期限 | スコアは受験日から2年間有効 | スコアは受験日から2年間有効 |
TOEFLとIELTS、どちらも4科目あり、試験時間も受験料金も同じくらいですね。
※値段や日程などは変更される場合がありますので、必ず 公式サイトでもご確認ください。
大きく違うのが、IELTSは筆記テストであり、リーディング、リスニング、ライティングは同日開催ですが、スピーキングのテストだけは別日に開催されるという点ですね。
スピーキングテストは筆記テストの前後6日以内の日程で別日に受験する(試験官と面接)
IELTSの出題形式について
ではIELTSの気になる問題内容について紹介していきます。
①リーディング
問題は3つのパッセージ(トータル40問、60分)から成っており、TOEFLに比べてパッセージ数が多いため制限時間内に長い文章を読む読解スキルが必要となります。それぞれ10~15の設問があり、内容はアカデミックなものが多いです。解答方法は、穴埋め問題やYes/Noで回答する問題等があります。TOEFLと同様に専門用語も使用されるため単語力(語彙力)が必要です。
※英単語のレベルについては、TOEFLと大きな差はないため、新たに単語帳・参考書を購入する必要性はありません。単語に関しては以下の一冊を徹底的にやり込めば十分です。
②リスニング
問題数が40問であり、IELTSのリスニングは聞きとりをしながら図や文章の一部分を穴埋めするような形式が多いです。TOEFLは長い文章をリスニングしたあと設問に答えるため内容の全体を掴むようにリスニングに集中できますが、IELTSは聞いた直後にすぐ回答を埋めていくことが必要です。また回答には数字なども求められますので、一単語ずつ細部まで聞き取る必要があります。ですが、TOEFLに比べて日常生活での対話なども出題されるため比較的易しいと言われています。
またIELTSはイギリス英語のため、アメリカ英語で勉強してきた方はアクセントの違いなどで聞き取りづらい可能性もあります。
IELTSはイギリス英語を中心とした様々な国のアクセントが用いられている
③スピーキング
IELTSのスピーキングテストは試験官との面接です。TOEFLはパソコンを使用してマイクに録音するのに比べて、IELTSのテストは会話力が必要となります。内容は仕事や家族、趣味などの簡単な自己紹介から始まり、面接官からテーマを渡されそれについてスピーチ、面接官からの質問、ディスカッションを行います。TOEFLがコンピュータに向かって話すマイクテストなのに比べて、IELTSは面接官との対話形式のため、相槌を打ってくれたり、質問が聞き取れなかった場合は聞き返すことが可能です。TOEFLは短い時間でコンパクトに自分の意見をまとめる必要があり、またそのテスト環境は独特の雰囲気があります。IELTSの方が対人なのでやりやすいという方もいるかと思います。
しかしTOEFLの方が練習を重ねれば慣れることができ、IELTSは試験官によってスコアは大きく変わりやすいと思います。
④ライティング
IELTSもTOEFLも問題数は2問(60分)であり、TOEFLはパソコンでのタイピングなのに比べてIELTSは筆記形式です。IELTSのライティングテストの内容は、グラフや地図を描写する問題(20分で150字以上必要)と議論や討論などから自分の意見を述べるエッセイ問題(40分で250字以上必要)があります。単語力やスペル、文法に注意し自分の意見を分かりやすく論理的に書くことが必要となります。TOEFLよりもライティングに関しては採点が辛いようです。
以上がIELTSのテストの出題内容になります。また、TOEFLのテストではスピーキング、ライティングの中でリーティング、リスニングした上でその内容について要約する必要があるような複合問題が出題されますが、IELTSには複合問題がありません。
IELTSには複合問題がないため、TOEFLに比べて難易度が低いとされている
IELTSとTOEFLの難易度の違い:スコア換算
IELTSのスコアについてまず解説します。
IELTSのスコアは各セクションで1.0〜9.0のバンドスコアで、平均した点数でオーバーオール・バンドスコアで英語のレベルを表します。各セクションのスコアは0.5刻みであり、スコアが0.5刻みの中間(0.25、0.75)の場合は切り上げられます。
例1 | 7.0+7.0+7.0+7.0 = 28 | 平均7.0 →オーバーオール 7.0 |
例2 | 6.5+6.5+7.0+7.0 = 27 | 平均6.75 →オーバーオール 7.0 |
ETSが発表しているTOEFLとのスコア換算は以下のようになります。
TOEFL Score | IELTS Band |
0–31 | 0-4 |
32–34 | 4.5 |
35–45 | 5 |
46–59 | 5.5 |
60–78 | 6 |
79–93 | 6.5 |
94–101 | 7 |
102–109 | 7.5 |
110–114 | 8 |
115–117 | 8.5 |
118–120 | 9 |
上記の表を見てみると、TOEFLが94点程度のスコアでもIELTSの場合はTOEFL100点と同様のスコアという表示になります。また先述したように切り上げてオーバーオール・バンドスコアを出すため、「IELTSの方が簡単」「スコアが伸びやすい」と言われる点になるかと思います。
TOEFLとIELTSのスコアにはかなりの互換性・相関性があるため、片方の対策を行うことでもう片方のスコアにも好影響を与えられます。
TOEFLとIELTSをどっちも並行して勉強できるか?
TOEFLを受験している方でIELTSの受験を視野に入れている方は、並行して同時に勉強ができるのかが気になりますよね。
筆者の経験として、TOEFLの対策をして勉強をしている方はIELTSを受けても実力に見合ったスコアが出やすいと思います。逆は難しいです。難しさの質が異なるため、単純にスコアの取りやすさを比較することは困難ですが、並行して両方を勉強するというよりはTOEFLの対策をしっかりととり、点数に伸び悩んでいればIELTSの受験も視野に入れてスケジュールを立てることが大切です。
実際にアメリカのMBAでも、元々TOEFLを勉強していたものの、途中でIELTSに切り替え、直後に高得点を取得できたという方は大勢います。
IELTSの受験申し込み期限については「筆記テストの19日前まで」とTOEFLよりも申し込み締切が早いため、公式サイトにて日程を確認のうえスケジュールを立てましょう。
TOEFLの試験対策をしていればIELTSにも変更しやすい。
まとめ:TOEFLとIELTSどっちを受けるかは目的次第
TOEFLとIELTSについて比較し解説させていただきました。さて受けるならどちらの試験がいいのでしょうか?IELTSの方が高スコアを出しやすいという点でIELTSの方にしよう、と安易に答えを出すのはおすすめしません。
TOEFLとIELTS、どちらを受けるべきかは以下の点で目的を確認するべきです。
<TOEFLとIELTS、受けるならどちらがいいのか>
・受験する大学がどちらのスコアを求めているのか
・どちらが自分に合っているテストか(テストの特徴から判断する)
自分の希望する進学先がどちらのスコアでも出願できる場合は、自分の長所短所から判断して勉強計画を立てることが大切です。
TOEFLの勉強をしていればIELTSでも結果が出やすく、また海外に留学した際は現地の授業についていくことができる実力をつけるのに役立ちます。まずはTOEFLの試験対策をとり、スコアが伸び悩んだ時にIELTSも視野にいれて動ける受験計画を立てるのを筆者はおすすめします。
また、一般的に日本ではIELTSよりもTOEFLの方が認知度が高い (受験者数も多い) ため、転職・就職にも役立つ可能性が高いでしょう。社会人の方で社内でのキャリアアップを目指している場合にも、認知度が高いTOEFLの方が有効なケースが多いと思われます。
自分にあった勉強法を見つけるまでは時間がかかるかと思います。こちらのサイトではおすすめの参考書やスコアアップの秘訣などTOEFLに関することをご紹介しておりますので、ぜひご活用ください。